「条文、論点知識を覚えても、それを答案のどこにどう書けばよいのかわからない」「問題集、答練の解説が今一つピンとこない」という人向けに、答案の書き方を紹介するブログです。「何を書くのか」「なぜ書くのか」「どう書くのか(具体例)」を解説します。
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2019年5月30日木曜日
第5回 憲法答案(人権問題・14条以外・法令違憲)の基本構造 その4
(前の記事の続きです。→その1はこちらです。)
9 答案の具体的な流れとチェックのやり方
(1)答案の具体的な流れ(定型フォーム)
例えば、以下のような流れになります(やや思考停止感がありますが、以下の、~、・・・、〇の部分を埋めるだけで、憲法解釈の思考枠組に沿った一応の答案になります)。
①「法〇条は、~する自由を侵害し、憲法〇条に反し、違憲ではないか」
↓
②「~する自由は・・・という理由から、憲法〇条で保障される」
↓
③「法〇条は、~の際に・・・の条件を課しており、~の自由を制約している」
↓
④「憲法上の自由も、公共の福祉による制約に服する。では、いかなる制約なら合憲なのか。違憲審査基準が問題となる」
↓
⑤「・・・という点からすると、厳しく審査すべきである。もっとも、~という点を考慮すれば、基準をやや緩め、〇〇の基準を用いるべきと解する」
↓
⑥「これを本件についてみる。
ア 目的審査
法〇条の目的は~であり、これは、・・・という観点からすれば、重要である。
イ 手段審査
手段についてみると、本件法〇条により、・・・となることからすれば、上記の~という目的達成に資することは否定できない。
しかし、単に~という目的を達成するのであれば、・・・という、より緩やかな手段によっても達成できるのであるから、本件法〇条は、手段として過剰であり、目的との間に実質的関連性は認められない。」
↓
⑦「以上から、法〇条は、憲法〇条に反し、違憲である。」
(2)チェックのやり方
たくさん文章を書くと、書くべきことを書けているのか自分でも混乱してくることもあるかと思います。そのようなときは、自身の書いた答案の、議論のひとまとまり(段落など)ごとの内容を「一文に要約する」ことをしてみるとよいです。このときに、上記①~⑦の各情報がきちんと入っていれば適切に論じられていますし、情報が足りていなかったり、結論(論旨)がおかしくなっている場合は、不適切です。
例えば、②のところで、自身の答案が「~する自由は、・・・という理由から、重要な権利である」などとなっている場合、(a)「憲法何条で保障されるのか」という情報が足りませんし、(b)結論(論旨)が「憲法で保障されるかどうか」ではなく「権利として重要かどうか」となっているので、これら2点から、不適切です。(権利の重要性は、審査基準定立のところで指摘すべきことです。)
自身の答案をチェックする際には、この例のように「段落ごとの要旨を一文に」まとめたうえで、その主語、述語等に着目して、「上記①~⑦の各情報が過不足なく指摘されているか」をチェックするのが良いと思います。
以上で、人権問題・14条以外・法令違憲の処理手順の説明は終わりです。
次回は、「原告の主張、反論、私見で何を書くべきか」について述べようと思います。
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