今回は、
①問題とする自由の特定
②上記①の自由が憲法上の権利であることの論証
③上記①の自由が制約されていることの指摘
④憲法上の権利も公共の福祉等の制約に服することの宣言 ←ココ
⑤違憲審査基準の定立 ←ココ
⑥あてはめ
⑦結論
の説明です。)4 ④公共の福祉等の宣言
(1)宣言が必要となる理由
憲法上の人権は大切ですが、憲法は、13条等において「公共の福祉」による制約を想定していますし、実際、人権同士が衝突した場合、何らかの規制が必要です。
そこで、人権にも制約がありうる(あらゆる制約が違憲だというわけではない)ということを宣言する必要があります。
(2)具体的な書き方
ここは、答案上で簡単に述べれば足ります。例えば、「・・の自由も無制約ではなく、公共の福祉(12、13条等)による制約に服する。では、いかなる制約であれば合憲といえるのか、違憲審査基準が問題となる」などとして、審査基準の議論に続くことになります。
5 ⑤違憲審査基準の定立(法令違憲)
(1)他の科目と異なる理由
違憲審査基準は、憲法答案における規範定立部分に当たりますが、憲法の文言が抽象的であることなどから、他の科目のように具体的な基準を定立するのは容易ではありません。
そのため、伝統的に提唱されてきた基準から適切なものを選んで用いるのがまずは基本となります。
(2)各種の基準について
よく使われる基準としては、目的手段に着目した「目的が必要不可欠で手段が必要最小限度の基準(厳格審査基準)」「目的が重要で、手段が目的との間に実質的関連性があるかどうかの基準(厳格な合理性の基準)」「目的が正当で、手段が目的との間に合理的関連性があるかどうかの基準(合理性の基準)」、LRAの基準、その他があります。
(3)基準の立て方について
ア 総論
基準を立てる際に、どの基準を採用するべきか、というのは、見解によって異なりますし、試験委員も、それぞれに自説を持つ学者・実務家の方々ですから、「どの基準を定立するか」に着目して採点しているとは思われません。「説得的な論拠で基準を定立できているか」が重視されているものとみるべきでしょう。
ただし、「原告(違憲を主張する)側の定立する基準はなるべく厳しいものとすること」「私見においては、反論も考慮する関係上、原告の主張と同じかそれよりは緩やかな基準とすること」というのが素直な思考かと思います。少なくとも、「特に明確な根拠なく、原告が緩やかな基準を採用している」というのは不適切と評価されても仕方ないでしょう。
イ 論拠について
憲法以外の通常の科目であれば、当該条文の趣旨を解釈して、それに見合うような基準を立てる、というのが素直なのですが、憲法ではそのような思考が困難です。
そこで、「基準を厳しくする方向の視点」「基準を緩める方向の視点」という、議論の方向性に着目して論拠を挙げることが考えられます。
基準を厳しくする方向の視点としては、「民主過程の根幹だから」「傷つけられると回復できないから」「内容規制であって恣意的規制の恐れが大きいから」「規制の態様が強度だから」その他が考えられます。
基準を緩める方向の視点としては、「経済的自由への制約は民主過程で回復しやすいから」「立法裁量の範囲が広い分野だから」「規制態様が弱いから」その他が考えられます。
(※なお、「規制によって得られる利益の重要度(反対利益の重要度)」など、基準定立の論拠としては使わない事情もあります。この点についてはまた別の機会に触れられればと思います。)
ウ 採用する基準について
やや思考停止感がありますが、「最低限度の答案の書き方」という観点からは、まずは、
・原告の主張など、「基準を厳しくする理由しか挙げていない場合」
→厳格審査基準等の厳格な基準
・被告の反論など、「基準を緩める理由しか挙げていない場合」
→合理性の基準等の緩やかな基準
・私見など、「基準を厳しくする理由、緩める理由ともに挙げてある場合」
→厳格な合理性の基準等の中間的な基準
といった選び方が良いと思います。
これを叩き台にして、この先、憲法知識を増やしたり答案作成法に慣れるにつれて、例えば関係判例の定立する規範を参考にした基準を立てるなど、よりブラッシュアップしていくのが良いでしょう。
なお、伝統的な基準は、基準の名前とその内容を正確に覚えておくのが良いです(例:厳格審査基準=目的が必要不可欠、手段が必要最小限度)。
エ 審査基準定立のまとめ
上記の通り、基準定立の際には、基本的には「基準を厳しくする理由、緩める理由を考慮して、厳格/緩やか/中間のいずれかの基準を定立する」ことになります。
具体的には、例えば、「本件自由は・・・の点で重要な権利だから、この点からすると、基準は厳しくすべきである。しかし、その一方で本件では・・・という規制にとどまり、規制の態様は弱いことも考慮すれば、基準をやや緩め、厳格な合理性の基準によるべきと解する」などといった書き方が考えられることになります。
(※上記「・・・」の部分は、例えば、「本件自由は~の点で人格の尊厳そのものの根幹にかかわるものであって」とか、「本件の規制態様は、単に事前の届出を求めるにすぎず」など、問題文の事情に即した具体的な論拠を挙げる必要があります。)
(次の記事に続きます)
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