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2019年9月14日土曜日

第16回 憲法答案(14条・法令違憲)の基本構造 その1




0 議論の大枠について


 典型的な自由権侵害等の法令違憲答案の流れについては以前の記事で説明しましたが、今回は平等権侵害の法令違憲の場合の答案の書き方の説明です。

 平等権問題の処理は通常の自由権等とやや異なる手順となりますが、その大きな流れは以下のとおりになります。(以下、「平等権処理の手順」と呼びます。)

①問題とする差別の特定
②14条が法内容の平等も要求しているか(通常は省略可)
③14条の平等が相対的平等であること(合理的差別を許容すること)の論述
④合理的差別かどうかの判断基準の定立
⑤あてはめ
⑥結論


 各手順について、以下具体的に説明します。




 問題とする差別の特定

(1)概説

 議論の最初には、まずは差別の特定、すなわち、

・何法何条により(法令)
・どのような属性に基づいて(属性)

・どのような差別が設けられているか(差別内容)

を特定することになります。



2)法令の特定

 法令違憲を主張する以上、平等権を侵害している法令が何なのかを特定する必要があります。これは当たり前のことではありますが、忘れないように注意が必要です。



(3)属性、差別内容の特定が必要な理由

 14条違反の主張は、「特定の属性(何らかのカテゴリー(範疇)に属すること)」を理由に「一定の差別的取り扱いがされている」ことの違憲性を言うものです。

 したがって、「どのような属性に着目して」「どのような差別的取り扱いがされているか」を特定することが議論のスタートラインになります。

 例えば「非嫡出子の法定相続分を嫡出子の2分の1とする」としていた改正前民法900条4号但書で言うと、「非嫡出子という属性」に着目して「法定相続分を嫡出子の2分の1とするという差別的取り扱いがされている」ということを指摘することになります。



(4)論述例

 上記から、答案上では、「民法900条4号は、非嫡出子であることに理由に法定相続分を嫡出子の2分の1とするという差別的取り扱いを設けている。原告としては、これは憲法14条に反する、と主張することが考えられる。」などと書くことになります。



(5)補足:どのような属性を問題とすべきか

 後の議論の先取りになりますが、問題とする属性によって審査基準の厳しさが異なってきます。(例えば、「門地」といった後段列挙事由に当たる属性に着目した差別であれば、厳しい基準で審査されることになる、と見るのが原則です。)

 したがって、原告の主張を構成する場合は、基準を厳しくできるような属性を問題とするべきです。(基準を厳しくした方が違憲の結論を導きやすくなりますので、原告には有利です。)



2 法内容の平等が求められることについて

 上記のとおり、ここは略してもよい部分です。

 なぜなら、今時、本気で「14条は法適用の平等のみを定めたものである」などと主張する人はあまりおらず、このような(あまり反論が予想されない)議論については、厚く論じるメリットがないからです(読み手を説得する必要がない論点は厚く論じる必要がない、ということです。)

 そこで、書くとしても、「14条は法内容の平等も要求しているものと解する」などと自説の結論を書くだけでよいでしょう。




3 14条の「平等」が「相対的平等」であること(合理的差別を許容すること)

 ここも特に争いの生じるような部分ではありません。
 そこで、「個々人の差を無視して一律の取り扱いをすることはかえって個人の尊重(13条)に反するので、憲法14条は相対的平等を定めたものであり、合理的差別は許容されると解する。」など、普通の論証を書けば足ります



(次の記事に続きます。)


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