(前の記事の続きです。→その1はこちらです。
前の記事での、
(3)②事実評価が必要な場合
ア 「問題文の事実関係をもとにして、一定の経験則に照らして事実を推認する必要がある場合」
イ 「そもそも規範自体が評価的・抽象的であるなどの理由から、各事実がどのような意味・価値を持つのかを指摘する必要がある場合」
の続き(イの例)からです。)
【例2 事実の持つ意味・価値を指摘する必要がある場合(イの例)】
たとえば、「警察が、公道からは見えない被疑者宅の中庭を、近傍の高層マンションの屋上から、高精度の望遠レンズで撮影した」という行為が刑事訴訟法197条の「強制の処分」に当たるかが問題となる場合を考えます。
規範としては、「意思に反して」「重要な権利を制約する」という見解で考えましょう。
このうち「重要な権利を制約する」という部分のあてはめを考えます。
仮に問題文でそのまま「警察は、甲の重要な権利を制約して本件撮影を行った」などと書かれていればあてはめも簡単ですが、そのようなことは、まずありません。
また、このような「重要な権利」というのは評価的かつ抽象的な規範ですから、あてはめの際には、問題文の事実を指摘して、それがどういう意味(価値)を持つ事実なのかを自分なりに評価したうえであてはめることが必須となります。
そこで、ここでも問題文に書かれている事実をもとにし、一定の経験則や法原則等に照らして、当該事実の持つ意味(価値)を指摘していくことになります。
この例であれば、以下のような書き方が考えられます。
「本件で警察は、公道からは見えない被疑者宅の中庭を、近傍の高層マンションの屋上から、高精度の望遠レンズで撮影している。ここで、通常、公道から見えない部分についてはプライバシーへの期待が強いことや、その場所を高所から見られることがあったとしても、あくまで肉眼での視認にとどまり、高精度望遠カメラで撮影されることまで予測することは困難であることに照らせば、かかる撮影をされないプライバシーは重要な権利であるというべきである。よって、本件行為は重要な権利を制約するものと言える。」
上記下線部を述べることで、「単に事実を指摘する」にとどまるのではなく、「その事実がどのような意味を持つのか」まで導き出し、そのうえで規範にあてはまることを指摘する、という流れです。
なお、このように「事実の持つ意味(価値)」という評価的なものを導き出す場合は、前の記事で触れた例1のようにその思考過程を答案上で省略してしまうことはできません。なぜなら、このような導出過程は「価値判断」を含むものであり、「価値判断」は答案作成者一人一人のものだからです(すなわち、採点者との間で当然のものとしては共有されていない、ということです。採点者との間で共有できていない事項は、省略してはいけません。)。
したがって、このような場合、「『どのような事実をもとに』『どのような経験則等に照らして』『その事実がどのような価値を持つと判断したうえで』あてはめをしたのか」を、省略せずに、はっきりと明示する必要があります。
3 まとめ
上に述べてきたとおり、あてはめは、
①問題文の事実指摘
なお、このように「事実の持つ意味(価値)」という評価的なものを導き出す場合は、前の記事で触れた例1のようにその思考過程を答案上で省略してしまうことはできません。なぜなら、このような導出過程は「価値判断」を含むものであり、「価値判断」は答案作成者一人一人のものだからです(すなわち、採点者との間で当然のものとしては共有されていない、ということです。採点者との間で共有できていない事項は、省略してはいけません。)。
したがって、このような場合、「『どのような事実をもとに』『どのような経験則等に照らして』『その事実がどのような価値を持つと判断したうえで』あてはめをしたのか」を、省略せずに、はっきりと明示する必要があります。
3 まとめ
上に述べてきたとおり、あてはめは、
①問題文の事実指摘
②事実評価(場合によっては省略可)
③本件が、定立した規範に文字通りに当てはまることの宣言
という流れを取ります。
実際の問題では、②の検討が要らないような要件も少なくありませんが、逆に、ここをしっかり書く必要がある場合も多いです。
②が必要な場合には、「当該事実がどのような意味(価値)を持つのか」といった事実評価を省いてしまったりしないように注意が必要です。(答練の添削コメント等で「あてはめが単なる事実の列挙となってしまっている」などといった指摘をされた経験がある場合は、特にこの点に注意するとよいでしょう。)
手持ちの答案集などで、
・どのような事実が指摘されているか(①)
③本件が、定立した規範に文字通りに当てはまることの宣言
という流れを取ります。
実際の問題では、②の検討が要らないような要件も少なくありませんが、逆に、ここをしっかり書く必要がある場合も多いです。
②が必要な場合には、「当該事実がどのような意味(価値)を持つのか」といった事実評価を省いてしまったりしないように注意が必要です。(答練の添削コメント等で「あてはめが単なる事実の列挙となってしまっている」などといった指摘をされた経験がある場合は、特にこの点に注意するとよいでしょう。)
手持ちの答案集などで、
・どのような事実が指摘されているか(①)
・事実評価のやり方(②)
・定立した規範とあてはめの結論部分との文字通りの対応があること(③)
の3点を確認し、特に②でどのような経験則や価値判断等を用いて事実評価を行っているかを見てみると勉強になると思います。
・定立した規範とあてはめの結論部分との文字通りの対応があること(③)
の3点を確認し、特に②でどのような経験則や価値判断等を用いて事実評価を行っているかを見てみると勉強になると思います。
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