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2019年5月27日月曜日

第5回 憲法答案(人権問題・14条以外・法令違憲)の基本構造 その3

(今回も、前回の記事の続きです。→その1はこちらです。

今回は、
①問題とする自由の特定
②上記①の自由が憲法上の権利であることの論証
③上記①の自由が制約されていることの指摘
④憲法上の権利も公共の福祉等の制約に服することの宣言
⑤違憲審査基準の定立
⑥あてはめ ←ココ
⑦結論 ←ココ
の説明になります。)


6 ⑥あてはめ

 一般的には目的手段審査の基準が使いやすいので、これを前提に説明します。


(1)目的審査

 問題文の事例で書かれている立法目的が、必要不可欠か(または、重要か、正当か)を論じます。なぜその目的が重要なのかの論拠は、常に必要、とまでは言えませんが、書けるほうが良いでしょう。(例えば「国民のプライバシー保護のために表現の自由に制約を加える」という場合であれば、「本件規制の目的は、他の国民の憲法上の権利であるプライバシー権を保障することであるから、その重要性を肯定できる」など。)


(2)手段審査

 当該目的を達成するのにその手段が最小限か(過剰な手段となっていないか)に着目して検討します。

 この点、単純に「手段が強いかどうか」ではなく、「目的達成するために最小限の手段かどうか(相当な手段かどうか)」を検討する、ということに注意が必要です。ですから、ある規制が大した人権制約にならないとしても、目的達成のためにより緩やかな手段があるのなら、その規制は最小限度の手段とはいえません。逆に、人権制約自体が大きくなってしまっても、それよりも緩やかな手段では目的達成できないのならば、その規制は最小限度の手段といえることになります。
 あくまでも目的達成の手段として最小限度かどうか」が問題となることに注意してください。

 なお、「最小限度」「実質的関連性」「合理的関連性」それぞれでの具体的なあてはめにおいては、前二者では「過剰な手段となっていないか(LRAがあるのではないか)」、最後については「一応目的達成に役立っているか」といった視点から検討するのが無難でしょう。前二者の処理に違いが出ないのは不自然な気もしますが、そもそも「厳格な合理性の基準」が言う「実質的関連性」の意味内容が不明確なため、この点はやむを得ないと考えています。これ以上の議論については、ご興味のある方は各自研究いただければと思います。


7 ⑦結論

 以上の議論を経たうえで、「本件〇法〇条は、憲法〇条に反し、違憲である」など、結論を明示します。


8 まとめ

 ここまで述べてきた①~⑦が、人権問題の処理の大きな流れになります。
 すぐにこのとおりに書くのは難しいかもしれませんが、手持ちの答案集などで、①~⑦の各議論がどのように書かれているかを確認してみるなどすると、思考過程が整理できると思います。


 次の記事で、具体的な書き方(答案の定型フォーム)、チェックの仕方をまとめます。



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