(前回の記事の続きです。→その1はこちらです。)
7 答案のフォーム例
後段列挙事由に基づく差別がされている場合を例にすると、以下のような答案の流れになります。
やや思考停止感がありますが、以下の、~、・・、〇の部分を埋めるだけで、一応の答案になります。
①「法〇条は、~という属性に着目して・・に差別的取り扱いを設けており、これは憲法14条1項に反し、違憲ではないか」
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②「14条1項は法適用の平等のみならず、法内容の平等も保障している。」
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③「また、同条は、相対的平等を定めたものであり、合理的差別を許容するものと解する。」
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④「そこで、合理的差別か否かの判断基準が問題となる。
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本件法は・・・という属性に着目して取り扱いを異にしているところ、・・・は14条1項後段列挙事由に該当する。そして、後段列挙事由は歴史的に不合理な差別がされてきた事由を特に定めたものであり、これに着目した差別は違憲の疑いが強いことから、その合理性は厳格に審査すべきである。
また、本件法により、Xは~という不利益を受けるところ、これは、・・・という点で憲法上重要な権利に対する差別的取り扱いであるから、この点からも、その合理性審査は厳格にすべきである。
以上から、差別の目的が必要不可欠で、かつ、当該差別を設けるのが必要最小限度の手段といえる場合に限り、合理的差別と認める基準を用いるべきと解する。」
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⑤「これを本件についてみる。
ア 目的審査
法〇条が差別を設けた目的は~であり、これは、・・・という観点からすれば、必要不可欠である。
イ 手段審査
手段についてみると、本件法〇条により、・・・となることからすれば、上記の~という目的達成に資することは否定できない。
しかし、単に~という目的を達成するのであれば、・・・という、より緩やかな手段によっても達成できるのであるから、本件法〇条は、手段として過剰であり、目的達成のための最小限度の手段とは言えない。」
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⑥「以上から、法〇条は、憲法14条1項に反し、違憲である。」
※後段列挙事由以外による差別の場合
後段列挙事由以外による差別の場合の④(審査基準定立)の部分は、例えば以下のような書き方になります。この場合でも、簡単に緩やかな基準にしてしまうのではなく、生じる不利益の性質(差別される権利の性質)なども考慮して説得力を持たせるところがポイントです。
(論述例)
「本件差別は、後段列挙事由による差別ではないから、この点から、緩やかな基準が妥当するようにも思える。
しかし、本件差別は、・・・という憲法上重要な権利に対して差別的制約を設けるものであり、その権利の重要性にかんがみれば、比較的厳しい基準で審査すべきと解する。よって、①本件差別を設ける目的が重要で、かつ、②本件差別という手段が、前記目的との間に実質的関連性がある場合に限り、合理的差別として許容されるものと解する」
8 まとめ
以上述べてきたとおり、平等権の処理の場合は通常の人権処理の手順とは流れが少し変わってくるので注意が必要です。
特に、基準定立の際や、あてはめの際などに、「権利制約自体が合理的かどうか」ではなく、「差を設けることが合理的かどうか」の問題を議論するのだ、ということを意識することが重要です。