第11回 「論理的思考」「論理的に書く」とは その1
1 前説
司法試験においては、出題の趣旨等で言われている通り、「論理的思考」が重要とされます。
ですが、ひとことで「論理的」と言っても、具体的にどう書けば論理的に書いたことになるのかがいまいちよくわからない、ということもあると思います。
今回は、論理的に書くとはどういうことか、についてのお話です。
答練の添削などで「言葉足らずである」「論理が飛躍している」「論理的でない」「規範とあてはめが対応していない」などというコメントを受けたことがある人にとっては特に参考になるかと思います。
答練の添削などで「言葉足らずである」「論理が飛躍している」「論理的でない」「規範とあてはめが対応していない」などというコメントを受けたことがある人にとっては特に参考になるかと思います。
2 概説(要点)
結論から言うと、論理的に書く、ということは、
「キーワードをリンクさせ、三段論法だけを繰り返して結論を出す」
ということです。
以下、具体的に説明します。
「キーワードをリンクさせ、三段論法だけを繰り返して結論を出す」
ということです。
以下、具体的に説明します。
3 詳説
(1)論理の流れの大枠
三段論法による論証においては、例えば、「A=B、B=C、ゆえにA=C」「A=B、B=C、C=D・・・Y=Z、ゆえにA=Z」などといった形で論理を繋いでいくことになります。
この中の各部分(「B=C」など)が一つの命題となり、必要な個数だけ命題を積み重ねて求める結論を得る、というのが論理の流れの大枠です。
(2)キーワードのリンクについて
このように「〇=〇」を繰り返して用いていく関係上、論証過程中にあるキーワード(A~Z)は、全て2回ずつ出てくる、ということに注意する必要があります。
(2)キーワードのリンクについて
このように「〇=〇」を繰り返して用いていく関係上、論証過程中にあるキーワード(A~Z)は、全て2回ずつ出てくる、ということに注意する必要があります。
本当はA=B=C=・・・=Zと書いて一気に終われればよいのですが、そのような書き方には無理があります。それは、通常の日本語の文章では、一文で一つの命題(「B=C」「~は〇〇である」など)しか伝えられないからです。
ですから、複数の命題を積み重ねて結論を出す際には、論証過程中においてキーワードは全て2回ずつ出てくることになります。このように、キーワードが2回ずつ出てきてAからZまでがイコールでつながっていて初めて「論理的に書いた」ということができます。
このように、キーワードを複数の文に入れることによって、複数の文の持つ各命題を繋ぐ(リンクさせる)ことを、当ブログでは、「キーワードのリンク」と呼びます。
抽象的な話だけではイメージしづらいと思うので、具体例で説明します。
【例1 法的三段論法】
例えば前にも触れた住居侵入罪の「侵入」要件についての法的三段論法を考えてみましょう。
答案の書き方としては、「『侵入』とは住居権者の意思に反する立ち入りを言うと解する。本件行為で甲は~しており、住居権者Vの意思に反して立ち入っている。よって本件行為は、『侵入』といえる。」などが考えられます。
これを命題ごとに分解して整理すると、
〔ア〕『侵入』(A)=住居権者の意思に反する立ち入り(B)
〔イ〕本件行為(C)=住居権者の意思に反する立ち入り(B)
ゆえに
〔ウ〕本件行為(C)=『侵入』にあたる(A)
となります。
〔ア〕は、規範定立部分(及びそれに先立つ要件提示部分)、〔イ〕は、本件あてはめ、〔ウ〕は、結論です。
やや大雑把に「=」の文字を使っているためにA、B、Cの順序が入り乱れていますが、A=B=C、というようにイコールでつながることはわかると思います。
この書き方では、『侵入』、「住居権者の意思に反する立ち入り」、「本件行為」がそれぞれ2回ずつ出てきているのがわかるはずです。これが、キーワードのリンクです。
なお、法的三段論法においては、必ずキーワードはリンクします(言い換えると、規範とあてはめが文字通りに対応する、ということです)。
【例2 論点の論証】
なお、法的三段論法においては、必ずキーワードはリンクします(言い換えると、規範とあてはめが文字通りに対応する、ということです)。
【例2 論点の論証】
また別の例で、放火罪の「焼損」の意義についての論証を考えてみましょう。
例えば、「放火罪は公共危険犯的側面が重要であるから、公共の危険発生の有無で『焼損』に達したかを判断すべきである。そして、日本では木造家屋が多いため独立燃焼が可能となれば公共の危険は発生するといえる。よって、『焼損』とは、独立燃焼に達したことを言うと解する。」などといった論証が考えられます。
このうち、命題の骨格部分(下線部分)の繋がりを整理すると、
〔ア〕放火罪の『焼損』(A)=公共危険(B)の有無で判断する
〔イ〕独立燃焼(C)に達した=公共危険(B)は発生している
〔イ〕独立燃焼(C)に達した=公共危険(B)は発生している
ゆえに
〔ウ〕独立燃焼(C)=『焼損』(A)
となります。
ここでもA~Cの各キーワードが2回ずつ出てきて各命題を繋いでおり、やはりキーワードのリンクを確認できると思います。
ここでもA~Cの各キーワードが2回ずつ出てきて各命題を繋いでおり、やはりキーワードのリンクを確認できると思います。
論理的に書くためには、以上のように、法的三段論法(規範定立→あてはめ→結論)という大きな枠でも、規範定立の論証部分といった小さな枠の中でも、キーワードのリンクが重要になります。
(次の記事に続きます)
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