「条文、論点知識を覚えても、それを答案のどこにどう書けばよいのかわからない」「問題集、答練の解説が今一つピンとこない」という人向けに、答案の書き方を紹介するブログです。「何を書くのか」「なぜ書くのか」「どう書くのか(具体例)」を解説します。
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2019年6月5日水曜日
第7回 問に形式的に答える/問に実質的に答える
今回は、科目を問わず、「問に答える」ということの意味についてのお話です。
1 問に形式的に答える、ということ
司法試験に限らず、問に答える際にまず大前提として必要なのは、問われたことに対して答える、ということです。
そして、問われたことに対して答えるためには、問に対応した形式で答えることが必要になります。
もっと細かく言うと、「『質問文のうち疑問詞が付された部分』を自身の返答に入れ替えたうえで、質問文をオウム返しする」ということです。ややこしい言い方になっていますが、「誰が花瓶を壊したのか?」という質問に対しては、「山田君が花瓶を壊した。」などと返答する、という程度のことです。ここでは、これを「問に形式的に答える」と表現します。
例えば、国に違憲な行為があってそれによりAが損害を受けた、という憲法事例を考えましょう。
「Aの国家賠償請求は認められるか?」という設問に対する答案の結論としては、「Aの請求は認められる。」または「Aの請求は認められない。」の二通りしかありえません。
ここで、もしも答案の結論が「当該国の行為は、違憲である。」で終わってしまっており、請求の当否について示されていないのであれば、問に形式的に答えたことにはなりません。どれほど論理構成、論点・判例の理解、事例へのあてはめ等が優れている答案であっても、問われていることに答えていない以上、本来的には0点です。(※ただし、本試験では途中答案でも一定の評価が与えられていることもあるようですから、実際に0点がつくとは限りません。)
問に形式的に答える、ということは当たり前のことではありますが、当該設問で問題となる論点部分に目が行き過ぎると、つい忘れてしまうことがあるので注意が必要です。
2 問に実質的に答える、ということ
上記の事例で言えば、答案にただ1行「Aの請求は認められる。」とだけ書けば、問に(形式的に)答えたことにはなります。しかし、実際にはこれではやはり0点です。司法試験において内容的に(実質的に)求められていることについて、何ら答案上に示されていないからです。
すでに触れたように、司法試験は実務家登用試験であり、実務家として現実の事例で法適用するための基礎力の有無を試す試験です。ですから、試験では、その能力を答案上で証明する必要があります。ここまですることで初めて「問に実質的に答えた」ということができます。
実務で法適用するための基礎力とはどのようなものか、もう少し具体的に言うと、大きくは、①「法的三段論法ができること」②「法適用の際に問題となる論点について、判例学説知識を前提にした論理的な議論ができること」③「結論の妥当性を図ることができること」の3点でしょう。
このうち①は、当ブログで述べてきた「法適用の基本構造」に沿って答案を書けば、示すことができます。
他方、②については、「論点を発見する能力」「判例学説知識」「論理的記述力」が必要となってきます。(「どうやって論点を発見するのか?」「どう書けば論理的に書いたことになるのか?」などは、また機会があれば触れたいと思います。)
③については、判例での相場感覚や常識的感覚等が必要となります。
これらの基礎力があることを答案上に示すことで初めて、問に実質的に答えたことになります。
3 まとめ
司法試験においては、問に実質的に答えることに注力するのがメインになりますが、他方で、つまらない失点を防ぐためにも、きちんと「問に形式的に答えられているか」についても常に意識していくべきしょう。
一言で言うと、「問われたことに対する結論を忘れずにしっかり明示する」ということです。
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