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2019年6月23日日曜日

第9回 規範の立て方/選び方 その1


第9回 規範の立て方/選び方 その1


 今回は、どのような規範を定立すべきか、というお話です。
 簡単に言うと、「判例学説を正確に覚えて、可能な限り判例学説どおり(またはその修正で)規範定立すればよい」という結論です。この点がすんなり受け入れられる人は、今回の議論を読むメリットはあまりありません。逆に、「判例学説を正確に覚えて書くのが面倒だ。どうして自分で考えた規範ではダメなのか?」という気持ちがある方には参考になると思います。


0 三つのポイント

 どのような規範を立てるべきか、についてはいろいろ整理の仕方があるかと思いますが、私は、
①あてはめに耐えるだけの具体的基準が示されていること
②判例・学説のいずれかで採用されている規範であること
③判例を考慮したうえでの規範定立であること
が最も重要な3点であると考えます。
 その理由を以下述べます。


1 ①あてはめに耐えるだけの具体的基準が示されていること

 第1回でも述べたとおり、条文上の文言はその内容が一義的に明確でない場合が多いため、具体的事例をあてはめるためには文言を解釈してその内容を具体化する必要があります(これは規範定立、などと呼ばれます)。このような目的で規範定立するという事情から、定立する規範は、「具体的事例で当該要件を満たすかどうかの判断ができるだけの具体性のある基準が示されていること」が必要です。

 例えば、住居侵入罪の「侵入」でいうと、どういう場合がこれに当たるかが不明確なので、「住居権者の意思に反する立ち入り」などと解釈して具体化します。これにより、「意思に反するかどうか」という判断基準が得られ、具体的事例でのあてはめが可能となります。

 逆に、仮に「実質的に犯罪的な立ち入りであれば『侵入』に当たると解する」などという基準を立てたとしても、「実質的とはどういう場合か?」「犯罪的とはどういう態様か?」などが曖昧過ぎ、あてはめに耐えることができません。(仮にこのような曖昧な基準を使って裁判所のさじ加減であてはめたうえで有罪判決を下されたとしたら、被告人としては到底納得できないでしょう。)

 このように、規範定立の際には、「あてはめに耐えるだけの具体性のある基準を立てる」というのが基本になります。



(次の記事に続きます。)






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