(前の記事の続きです。→その1はこちらです。)
2 論述の基本的な流れ(要件裁量を念頭に説明します。)
裁量統制の論述の大きな流れは以下のとおりとなります。
①問題とする行政処分の根拠条文を特定する
↓
②当該処分について裁量権があることを論証する
↓
③裁量があるとしても、裁量逸脱濫用がある場合には違法(取消事由)となる旨の宣言(行訴30条)
↓
④裁量逸脱濫用の判断基準の定立
↓
⑤本件の検討(あてはめ)
↓
⑥結論
↓
②当該処分について裁量権があることを論証する
↓
③裁量があるとしても、裁量逸脱濫用がある場合には違法(取消事由)となる旨の宣言(行訴30条)
↓
④裁量逸脱濫用の判断基準の定立
↓
⑤本件の検討(あてはめ)
↓
⑥結論
3 手順ごとの詳細
(1)①処分の根拠条文の特定
処分の適法性を検討するわけですから、まずは処分の根拠となる法律を特定しないと議論が始まりません。したがって、根拠条文の特定が必要です。
そして、根拠条文は、法律だけではなく、法律が委任した政令等までしっかり拾って示す必要があります。
(なお、「審査基準」「処分基準」などの行政内部の裁量基準がある場合、「そのような基準に基づいて処分の許否を決める」ということ自体が裁量権行使そのものなので、これらについては処分の根拠法規としての指摘は要りません。)
(2)②裁量権の論証
ア 裁量権論証の必要性
裁量逸脱濫用の問題になるのは、当該処分が裁量処分の場合です(行訴30条)。つまり、裁量権があって初めて裁量逸脱濫用の問題になります。したがって、まずは当該処分につき行政に裁量権がある、ということを論じる必要があります。
そして、行政裁量は法律により与えられるものですから、根拠法律を解釈して行政裁量の有無を論じる必要があります。ここは、当たり前のことではありますが、書き忘れないように注意が必要です。
イ 論証のポイント
法律による行政の原理という前提がありますから、行政裁量を支える根拠は、「法律がそのように定めた」ということです。
そして、法律が行政裁量を認めているといえる根拠は、大きくは、
・条文が裁量を許すような抽象的な書き方になっている(形式的根拠)
・処分の際に専門的技術的な判断を要し、行政の裁量を認めざるを得ない(実質的根拠)
の2点です。答案で裁量権の論拠を書く際は、この二つを書けば必要十分です。
実際に書く場合は、例えば、単に「法〇条は抽象的な文言を用いており・・」とするだけでは、どこがどう抽象的なのかわかりませんから、「法〇条は『土地の高度利用のために必要がある場合には』といった抽象的な文言を用いており・・」など、具体的な文言も指摘する必要があります。
また、例えば、「本件処分には専門的技術的判断が必要であり・・」とするだけではやはりどこがどう専門的なのかわかりませんから、「本件処分においては、個々の土地利用の相互関係まで考慮して、地域全体の土地利用をいかに図るかについて総合的判断が必要であり、専門的技術的判断を要する」など、具体的な根拠も指摘する必要があります。
(3)③行訴30条の指摘
ここは行訴法の条文どおりなので、「もっとも、裁量があるとしても、裁量逸脱濫用がある場合には違法(取消事由)となる(行訴30条)。」など、簡単に書けば足ります。ただし、絶対に書き落としてはいけません。行訴30条こそが当該裁量処分の違法性を支える直接の法的根拠だからです。(ここを書き洩らしてしまった場合にどれほどの致命傷になるかはわかりませんが、減点になることは間違いないと思います。)
(次の記事に続きます。)
0 件のコメント:
コメントを投稿